守り手
マストに身を縛る猫
VMNR
「必ず揺れる。だから縛った。」
暴走するのは分かってる。だから先に爪を縛った。
武器
保険と宝くじ、猫はその両方を買った。まとまった現金を置いておけば、どんな暴落も土台までは砕けない。決まった小口を市場に張っておけば、時代が来た日を完全に逃すこともない。たいていの人間は一生かけて片方しか身につかないが、猫は両方できる——自分を追い込んでできるようになっただけだが。
死に方
縄は嵐には耐える。「今回だけ」には耐えない。「今回だけは事情が特殊だ」。最初の例外で儲かってしまうと、書いておいたルールはその瞬間から参考意見に格下げされる。縄がゆるむのは、ほぼ決まって一番儲かった年だ。儲かってる時にしか、猫は自分に例外を申請する資格があると思えない。しかもその申請書は、当時のルールより丁寧に書かれてる。
原型
ナシーム・ニコラス・タレブ1987年のブラックマンデーでも2008年の危機でも、彼は「平時は小さく負け、崩れる時に大きく勝つ」構造で大きく稼いだ。そして「自分を信用しない」を、ひとつの哲学にまで書き上げた。ただ本人が何度も認めてる。難しいのは理屈より規律のほうだ、と。縄は誰でも買える。ずっと結び続けられる人間はほとんどいない。猫も同じだ。分かってることはとっくに分かってる。問われてるのは、十年目にまだ縛ってるかどうかだ。