耕し手
波間に巣を編む蟹
TBEG
「いいものを作れば、金は来る。」
金に興味がないわけじゃない。ただ、波がいつか岸まで運んでくれる方に賭けてるだけ。
武器
作るものに水増しがない。アルゴリズムに媚びず、クライアントに折れず、換金のスケジュールに追われない。コンテンツが溢れる時代に、この混じり気のなさは珍しい。しかも蟹の場合は天然物。混ぜたくても混ぜる場所がない。
死に方
波がいつ来るか、蟹には決められない。(ゴッホを本気で称えた最初の長文が出たのは1890年1月、彼はその年の7月に死んでる。市場が本当に彼を認めたのは1901年の回顧展。)作品が認められる時間と、作品に値がつく時間は別々に流れる。家賃はそのどちらとも別の三本目、しかも毎月きっちり来る。
原型
フィンセント・ファン・ゴッホ弟テオからの送金が、彼の唯一の砂浜だった。毎月決まった額を、十年。美術史でいちばん純度の高いロマンの下にも、安定収入が敷いてある。ただし、その収入を稼いだのは本人じゃない。彼にも土台はあった、家族に外注してただけ。「蟹のテオは誰か」。この問いの方が「波はいつ来るのか」よりずっと正直。