耕し手
潮まかせの貯金時計
TMNR
「人が触ると、だいたい壊れる。」
証券アプリを開いたのは、後にも先にも一度だけ。自動積立の引き落としが何日だったか、忘れた日だ。
武器
一番あてにならない部品を、システムから外してある。人間だ。行動ファイナンスという学問が一つまるごと研究してきた間違いの目録を、貯金時計は自動積立ひとつで全部よけている。
死に方
機械は平均を見る。例外は見ない。失業した月も、病気になった月も、引っ越した月も、自動積立は同じ額を引き落とす。ルールにセンサーはついていない。生活にはついている。貯金時計は毎月、その通知にほとんど気づいていない。十年見直していない自動化は、いつか最悪のタイミングで、いちばん機械的なことをやる。
原型
ジョン・ボーグルこの機械を作った人だ。あまり知られていない一点がある。「相場を見るな」を発明した本人が、この機械を六十年見ていた。晩年には、割高か割安かを見て株と債券の比率を動かしてもいた。機械は自動でいい。作る人と直す人は、昔から手動だ。彼は何千万人分の当直を引き受けた。貯金時計の機械は、まだ当直を一人も雇っていない。