守り手
ダムを叩くビーバー
VBNR
「もう一回磨いてから出す。」
スケジュール表に一分の隙もない。フォルダの中には、v0.1 が三つ眠ってる。
武器
創作者のなかでいちばん希少なものを、ビーバーは持ってる。飢えない土台。来月の家賃のためにろくでもない仕事を受ける人もいる。ビーバーは断れる。作品より先にダムができていたから。この順番で合ってる。
死に方
磨き込みは、最上級の先延ばしだ。v0.1 から v0.2 までの距離は無限にもなり得る。「もう十分」に検収基準がないからだ。(ブラームスは第一交響曲を二十一年磨いた。背後にはベートーヴェンが立っていた。)ビーバーの「公開」欄はとっくに何度も日付が変わってる。書き換えるたび、今度こそという手応えはあった。背後にはビーバーを提出させない審査員が一人立ってるけど、その審査員はたぶんビーバー自身の頭の中にしか住んでない。
原型
ブラームス第一交響曲に二十一年。初演の直前まで手を入れてた。 演奏と出版の収入がダムで、だから磨き続けられた。作品は最後に偉大になった。ただ、音楽史はもう一行を書き留めてる。燃やした作品のほうが、発表した作品より多い。ビーバーのフォルダにある v0.1 と、彼の暖炉に入った草稿は、同じものの二つの結末だ。